<受給権の消滅に注意!>年金の時効について確認しておきましょう

 年金の時効には、年金を受けるための基本となる権利である「基本権」と、支払期に支払われる年金を受けとる権利である「支分権」があります。

 それぞれにおいて、時効の取り扱いが異なっていますので、この違いについて確認していきましょう。

基本権の時効について

 厚生年金保険から受けられる年金には、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金と旧法の通算老齢年金(※1)、通算遺族年金、特例老齢年金(※2)、特例遺族年金があります。

 これらの年金を受ける権利を「基本権」といいますが、5年経過したときは「裁定請求する権利」が時効により消滅します。

 つまり、それぞれの年金の受給要件を満たしたときに、受給権は当然発生することになりますが、受給権が発生してから5年のうちに裁定の請求をしなければ、受給権は消滅時効にかかり年金を受け取ることができなくなるということです。

 なお、障害手当金は一時金ですが、これにつきましても、5年を経過したときは裁定請求する権利が時効により消滅します。

 現在、基本権の時効につきましては、現行法令の許容する限度において弾力的な運用が図られていまして、やむを得ない事情により、時効完成前に請求することができなかった場合は、その理由を書面で申し立てることにより時効消滅されません。

(なお、平成19年7月7日以降に受給権が発生した年金について、時効を援用しない場合は申立書の提出は不要です。)

支分権の時効について

 年金は、毎年6回に分けて支払期に支払われることになりますが、この支払期に支払われる年金を受けとる権利を「支分権」といいます。

 この支分権につきましても、5年を経過したときは、時効により消滅し、受け取れなくなります。

 この支分権の時効につきましては、年金時効特例法等により受給権者または受給権者であった者の年金記録の訂正が行われたうえで,裁定又は裁定の訂正が行われた場合においては、5年を経過しても自動的に消滅せず、個別に援用することとなっています。

 なお、平成19年7月7日以降の支分権につきましては、年金記録の訂正や事務処理誤り等を除いてては、原則として時効が援用されることとなっています。

まとめ

 以上、まとめますと、基本権は、やむ得ない理由がある場合は、原則として援用されませんが、支分権につきましては、年金時効特例法等に該当しない事案や本人の責に基づく事案につきましては、原則として援用され、5年を経過すると支給を受ける権利は消滅することとなります。

注釈(用語の説明)

(※1)通算老齢年金: 対象15年4月1日以前生まれの方で、複数の年金制度(各々1年以上)に加入している人が、その制度から老齢年金を受けれるだけの受給資格期間を満たしてない場合に、通算することにより受給資格期間を満たしたときに、各々の加入期間に応じて支給される制度。

(※2)特例老齢年金: 60歳以上で、かつ1年以上の被保険者期間があるが、老齢厚生年金を受けるために必要な被保険者期間を満たしていない場合で、被保険者期間と旧共済組合員期間とを合算した期間が20年以上ある者に支給される制度。(つまり、条件付きで旧共済組合員期間を厚生年金に加算できる制度のこと)

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