<徹底解説!>老齢基礎年金の改定の仕組みと年金額について

 老齢基礎年金は、物価(物価変動率)や賃金(名目手取り賃金変動率)などの変動に合わせて毎年度改定されます。また、現役世代の人数の減少や平均余命の伸びに合わせて年金の給付水準を自動的に調整する仕組み(マクロ経済スライド)によりスライド調整されます。

 新規裁裁定者(68歳到達年度前の受給権者)と既裁定者(68歳到達年度以降の受給権者)では、改定手順が異なっています。

当年度の改定率の算出方法について

(1)新規裁定者の場合

 原則として、毎年度、名目手取り賃金変動率を基準として改定し、当該年度の4月以降の年金たる給付について適用します。

 当年度改定率 = 名目手取り賃金変動率(※1) - スライド調整率(※2)

(2)既裁定者の場合

 原則として、毎年度、物価変動率を基準として改定し、当該年度の4月以降の年金たる給付について適用します。(ただし、物価変動率>名目手取り賃金変動率のときは、名目手取り賃金変動率を基準とします)

 当年度改定率 = 物価変動率(名目手取り賃金変動率) - スライド調整率(※2)

改定率の改定手順について

 平成16年度の改定率を1として、ここを起点とします。

 平成17年度以降の改定率の改定は、1年ごとに前年度の改定率に当年度の改定率を乗じることによりおこないます。年金額の算出には、この前年度の改定率に当年度の改定率を乗じた「改定率」を使用します

 なお、改定後の率が前年度の改定率を下回るときは、当年度の改定率を1として減額分を繰り越す(キャリーオーバー)等の例外措置があります。

基本的な老齢基礎年金額の計算式

 老齢基礎年金の基本的な計算式は、平成16年の年金法改正で定められた基礎年金の金額(40年間加入した場合の満額)に対して、上記により算出した「改定率」を乗じていきます。

 780,900円(平成16年度額)× 改定率 × 保険料納付月数/480月

保険料納付済期間が480月に満たない場合

 保険料納付済期間の月数が480月に満たない場合は、不足する月数に応じて減額された額となり、平成21年3月以前(国庫負担が3分の1)と平成21年4月以降(国庫負担が2分の1)で次のように計算されます。

(1)平成21年3月以前の計算式

 780,900円(平成16年度額)× 改定率 × (①+➁×5/6+③×4/6+④×3/6+⑤×2/6)/480月(加入月数×12月)(※3)

(2)平成21年4月以降の計算式

 780,900円(平成16年度額)× 改定率 × (①+➁×7/8+③×6/8+④×5/8+⑤×4/8)/480月(加入月数×12月)(※3)

 ①保険料納付済期間の月数、➁保険料4分の1免除期間の月数、③保険料半額免除期間の月数、④保険料4分の3免除期間の月数、⑤保険料全額免除期間の月数

振替加算による加算

 老齢厚生年金、退職共済年金等で、配偶者加給年金の対象となっていた人のうち、昭和41年4月1日以前に生まれた人に支給されます。配偶者の老齢基礎年金に「224,700円×改定率×生年月日に応じた率」の振替加算が加算されます。

 加給年金からの切り替えですが、加給年金に比べ、特に若い方は年金額がガクッと減ってしまうため注意が必要です。

付加年金の給付

 付加保険料(月額400円)を納付した人については、老齢基礎年金に上乗せして付加年金が支給されます。付加年金は「200円×付加保険料納付済期間の月数」で計算された額が支給されます。

 受給開始後、わずか2年で元の取れる非常にお得な年金です。

注釈(用語の説明)

 (※1)名目手取り賃金変動率とは、前年の物価変動率に「2~4年前までの3年度平均実質賃金変動率」と可処分所得割合変化率を乗じたものです。

 (※2)マクロ経済スライドによるスライド調整率は、 公的年金全体の被保険者の減少率に平均余命の伸び率を乗じたものです。また、キャリーオーバーとして、賃金(物価)上昇の範囲内で、前年までの未調整部分を繰り越して調整することがあります。

 (※3)被保険者期間の月数が480月に満たない場合: 大正15年4月2日から昭和16年4月1日までの間に生まれた人については、国民年金制度発足前にすでに20歳に到達しているため、480月の被保険者期間がなくても加入可能月数を全て満たせば満額の年金が支給されます。

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