<給付制限に注意!>健康保険において給付制限される具体的な事例とは?

 健康保険法116条に「被保険者又は被保険者であった者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を発生させたときは、当該給付事由に係る保険給付は行わない」と書かれていますが、具体的にはどういったことなのでしょうか? 

 ちょっと気になりなりますよね。そこで、この場合において、「給付制限される具体的な事例」についてまとめてみました。

自殺により死亡した場合について

 最初に、「自殺により死亡した場合」ですが、これは故意に基づく事故ではありますが、この場合、給付制限はありません。

 これは、「死亡が最終的1回限りの絶対的な事故であること」や、「埋葬料が被保険者であった者に生計を維持されたもので、埋葬を行う者に対して支給される性質であること」により、故意に生じさせた事故に該当しないものとして取り扱うこととされたからです。(以前は、故意に基づく事故として給付制限されていました。)

 一方、「自殺未遂によって生じた疾病等」に関しましては、その傷病の発生が精神疾患等に起因すると認められる場合等を除き、療養の給付または傷病手当金の支給はしないこととなっています。

飲酒の上、スピード違反で事故を起こした場合について

 今度は、「飲酒の上、スピード違反で事故を起こした場合」ではどうでしょうか?

 この場合、酒を飲むと通常時に比べて注意力が著しく低下し、危険に対する判断力も鈍くなることは衆智のとおりです。

 したがって、飲酒の上、スピード違反で事故を起こしたということは、単なる過失にとどまらず、故意があったと認定することができます。

 また、このような行為により事故が発生することは、社会通念上予想され、因果関係があると考えられますので、健康保険法116条の適用により保険給付は行われません。

無免許運転で事故を起こした場合について

 最後に、「無免許運転で事故を起こした場合」ではどうなるのでしょうか?

 犯罪行為により事故を起こすということは、犯罪行為と事故の間に因果関係がなくてはなりませんが、この場合、無免許運転をすれば、当然、事故を起こすとは考えにくく、仮に、運転技術の優れた者であれば事故は生じなかったかもしれません。

 よって、無免許運転と事故の間には、必ずしも相当因果関係は認められないことになり、給付は制限されないと考えられます。(ただし、無免許運転が著しい不行跡と認められた場合は、健康保険法117条により、給付の全部または一部が受けられない場合がありますのでご注意ください。)

 参考:健康保険法117条 「被保険者が闘争、泥酔又は著しい不行跡によって給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は、その全部または一部を行わないことができる。」

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