<第三者行為による被害事故発生!>保険給付の扱いはどうなる?

 健康保険の保険給付における当事者は、保険者と被保険者ですが、保険事故が当事者以外の第三者の責によるものだとしたら、保険給付との関係はどのようになるのでしょうか。

先に保険給付がなされた場合

 保険事故が、第三者の行為(例えば、交通事故)により生じた場合であっても、健康保険法上の受給の要件を満たしていれば、健康保険による給付がされます。

 この場合、保険者は、保険給付をした価額の限度において、保険給付を受ける者(その事故が被扶養者について生じたものであれば、被扶養者も含まれます)が第三者に対して有する損害賠償請求権を代位取得することが認められています。

 これは、被保険者が第三者による事故について保険給付を受ければ、事実上損害が補償されたことになり、その限度で第三者から損害賠償を受ける必要がなくなり、保険者としても、本来ならば行う必要のない保険給付をすることにより損失を受けることになるからです。

保険者が求償権を行使するための要件

 この場合、以下の3つの要件を満たせば、保険給付の価額の限度で、保険給付を受ける権利を有する者が有している損害賠償請求権を、法律上当然に代位取得することになり、保険者は第三者に対して求償権を行使することができます。(健康保険組合の場合は、付加給付部分も含まれます)

  1. 保険事故が第三者の行為によって生じたものであること
  2. 当該事故に対して、保険者が保険給付を行ったこと
  3. 保険給付を受けた被保険者が、第三者に対して損害賠償請求権を有していること

 ただし、被保険者が保険給付を受ける前に、第三者に対して損害賠償の債務を免除したり、損害賠償額を全部受領してしまった場合は、損害賠償請求権が消滅したことになりますので、代位取得することはできないことになります。

 したがって、第三者行為により事故が生じた場合に、被保険者が保険給付を受けようとするときは、第三者行為の事実、第三者の住所、氏名及び被害の状況を保険者に届け出ることになっています。

先に損害賠償がなされた場合

 また、保険事故が、第三者の行為によって生じた場合に保険給付を受ける権利を有する者が、第三者から損害賠償を受けたときは、保険者はその価額の限度で保険給付を行う責を免れることになります。

 これは、損害賠償を受ける前に第三者から損害賠償を受ければ、保険給付を受ける権利を有する者としても実際に損害を補填されたことになり、もし保険給付を受けるとすれば二重に補填されることになるからです。

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