<加給年金とは>その仕組みついて徹底解説

加給年金とは

 加給年金は、厚生年金の受給権者が以下のいずれかである場合に、

  1. 被保険者の月数が240月以上ある者が、受給権を取得した当時、または、被保険者の月数が、240月になるに至った当時
  2. 昭和16年(女子は昭和21年)4月2日以後に生まれた人が、定額部分の支給開始年齢に到達したとき
  3. 障害者・長期加入者の特例該当者が、定額部分の支給開始年齢に到達したとき

 その者によって生計を維持していた(※1)以下の者について加算されます。

  1. 65歳未満の配偶者(婚姻の届け出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者(※2)を含む)
  2. 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子
  3. 障害等級1級または2級の障害の状態にある20歳未満で婚姻していない子

配偶者の要件について

 加給年金の加算は、配偶者が65歳になるまでですが、大正15年4月1日以前に生まれた配偶者は、老齢基礎年金の適用を受けないので、65歳を過ぎても加給年金は加算されます。

 配偶者が、厚生年金その他の年金制度から老齢、退職、または障害を支給事由とする年金(※3)を受けられる間は、加給年金が支給停止されます。(ただし、配偶者に対する給付が全額支給停止になっている場合には、加給年金は支給されていました)

 しかし、令和4年4月以降は、配偶者の老齢または退職を支給事由とする給付が全額支給停止となっている場合にも、これ以外に受け取る権利がある場合は加給年金は支給停止になります。

 ただし、以下の場合には、令和4年4月以降も支給を継続する経過措置が設けられています。

  1. 令和4年3月時点で、本人の老齢厚生年金または障害厚生年金に加給年金が支給されているとき
  2. 加給年金の対象である配偶者が、厚生年金の被保険者期間が240月以上ある厚生年金等の受給権を有しており、全額が支給停止されているとき

子の要件について

 子(認知された子も含む)については、養子や受給権を得たとき胎児だった子も対象となります。胎児については、出生の月の翌月から対象者になります。

加給年金額について

 加給年金額は、下表のとおりです。令和5年度の改定率は1.018です。(かっこ内:令和5年度の額)配偶者も子もいる場合は、それぞれの額を加えた額が加算されます。

 なお、改定率を乗じて得た率に50円未満の端数が生じたときは切り捨て、50円以上100円未満の端数が生じたときは100円に切り上げとなります。

  対象者         加給年金額(円)
配偶者  224,700×改定率(228,700)
1人目/2人目の子  224,700×改定率(228,700)
3人目以降の子  74,900×改定率( 76,200)

特別加算について

 昭和9年4月2日以後に生まれた者が受ける配偶者加給年金には、受給権者の生年月日に応じて、特別加算が行われます。令和5年度の改定率は1.018です。(かっこ内:令和5年度の額)

       生年月日    特別加算額(円)
昭和 9年4月2日~昭和 15年4月1日 33,200×改定率 (33,800)
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日 66.300×改定率 (67,500)
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日 99,500×改定率 (101,300)
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日132,600×改定率(135,000)
昭和18年4月2日~165,800×改定率(168,800)

加給年金額の減額改定について

 加給年金の対象者が、次のいずれかに該当したときは、その人は加給年金額の対象者とならなくなり、該当した月の翌月から年金額が減額されます。

  1. 死亡したとき
  2. 受給権者による生計維持の状態がやんだとき
  3. 配偶者が離婚したとき
  4. 配偶者が65歳に達したとき(大正15年4月1日以前生まれの配偶者を除く)
  5. 子が養子縁組によって受給権者の配偶者以外の人の養子となったとき
  6. 養子が離縁したとき
  7. 子が婚姻したとき
  8. 子について、18歳に達する日以後の最初の3月31日が終了したとき(1級または2級の障害の状態にあるときを除く)
  9. 子が1級または2級の障害の状態に該当しなくなったとき(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるときを除く)
  10. 子が20歳に達したとき

注釈(補足説明)

 (※1)生計を維持していたとは、受給権者と生計を同一にしていた人で、年収850万円の収入を将来にわたって得られない人が該当します。

 (※2)事実婚関係とは、婚姻の届出をしていないが、社会通念上、夫婦としての共同生活と認められる事実関係、いわゆる内縁関係をいいます。事実婚として認められるためには、以下の条件を満たしていることが必要です。

  1. 当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること。
  2. 当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係があること

 ただし、民法上婚姻が禁止されている内縁関係(近親婚、養親子関係の婚姻など)については、前記の条件を満たしていても、事実婚とは認められません。

 なお、届出による婚姻関係と内縁関係が重複している、いわゆる重婚的内縁関係にある場合は、届出による婚姻関係が優先することになりますが、届出による婚姻関係が実態を全く失っているとき(当事者が住居を別にし、かつ、当事者間に経済的な依存関係が反復して存在しておらず、当事者間の意思の疎通を表す音信または訪問等の事実が反復して存在していないとき)に限り、内縁関係が事実婚として認められます。

(※3)老齢、退職、または障害を支給事由とする年金とは、以下の年金です。なお、老齢厚生年金や退職共済年金は、被保険者期間等が20年(中高齢者の期間短縮の特例15年~19年などに該当する場合は、その期間)以上あるものに限ります。

  1. 厚生年金保険法による老齢厚生年金および障害厚生年金並びに旧厚生年金保険法による老齢年金および障害年金
  2. 国民年金法による障害基礎年金および旧国民年金法による障害年金
  3. 改正前の船員保険法による老齢年金および障害年金
  4. 国家公務員共済組合法による退職共済年金および障害共済年金並びに旧国家公務員共済組合法による退職年金、減額退職年金および障害年金並びに旧国家公務員等共済組合法の長期給付に関する施行法に基づく年金給付であって退職又は障害を支給事由とするもの
  5. 地方公務員等共済組合法による退職共済年金および障害年金並びに旧地方公務員等共済組合法による退職年金、減額退職年金および障害年金並びに旧地方公務員等共済組合法の長期給付等に関する施工法に基づく年金給付であって退職または障害を支給事由とするもの
  6. 私立学校教職員共済法による退職共済年金および障害共済年金並びに旧私立学校教職員共済法による退職年金、減額退職年金および障害年金
  7. 恩給法(他の法律において準用する場合を含む)に基づく年金たる給付であって退職または障害を支給事由とするもの
  8. 地方公務員の退職年金に関する条例に基づく年金たる給付であって退職または障害を支給事由とするもの(通算退職年金を除く)
  9. 厚生年金保険法附則第28条に規定する財団法人日本製鉄八幡共済組合が支給する年金たる給付であって退職又は障害を支給事由とするもの
  10. 旧執行官法附則第13条の規定に基づく年金たる給付
  11. 旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法に基づいて国家公務員共済組合連合会が支給する年金たる給付であって退職または障害を支給事由とするもの
  12. 戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づく障害年金

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